長期透析による透析アミロイドーシスとシャント・手の疾患

はじめに

透析歴が長くなると手のしびれ、痛みなどの手にトラブルがみられることが多々あります。
これは、透析アミロイドーシスといわれ、治療を受ける必要があります。

透析アミロイドーシス
長期にわたって透析をされてきた方の中には、手のしびれや、手指の動きの障害、肩の痛みといった、上肢を中心としたさまざまな問題を抱える方もおられます。

私も昭和59年から透析をしていますが、手のばね指、手根管症候群、肩の痛みなどが出て手術をしています。
それといまはオンラインHDF療法をしていますが、今後の効果に期待しています。
色々なアミロイドによる障害とさまざまな血液透析療法の現状をお伝えします。

オンラインHDF療法に変えて2年ほど経ちましたが、手根管症候群の進行は止まったままです。

手根管

アミロイドの沈着によっておこる手の疾患

 代表的な疾患
 ①「手根管症候群」
 ②「ばね指」
 ③「肘部管症候群」
 ④「肩関節症」
 などが上げられます。

①アミロイドによる手根管症候群

 手根管症候群の症状・診断
手根管症候群の特徴的な症状とは、透析中における指のしびれ、明け方に手のしびれのよる目覚めなどがあります。しびれるのは親指から薬指までですが、だるいなどの声も聞かれます。自転車に乗っていると指がしびれてくるという方もいらっしゃいます。また、手根管のある手首の手のひら側を叩くと指先までひびくという症状もあります。
手根管症候群が進行しますと、親指の付け根の筋肉が痩せてきて物がつまみにくくなります。
確定診断には正中神経に電気を流し、神経の伝わりをみて診断します。透析患者さんの場合アミロイドは時間の経過とともに沈着していきますので、自然に軽快することは難しく、進行していきます。それゆえ早期に手根管を開放する手術を受けることを勧めます。

 原 因
透析患者さんの場合には、アミロイドが沈着して靭帯が肥厚し、正中神経を圧迫するため親指から薬指までのしびれや痛みが現れ、手根管症候群が発症すると考えられています。
透析を行って10年を超えると手根管症候群の発症の頻度が増えるといわれています。

 治療・手術
透析患者さんの場合、症状は徐々に進行していきますので、早期に手術的に圧迫をとることが必要です。肥厚した横手根靭帯を切開し、正中神経の圧迫を取り除きます。この手術は手の平を切開して、実際の目で見ながら横手根靭帯を切開します。そして直接神経を確認することができ、神経損傷もなく、さらに、時間も15分程度で終了し、出血もほとんどないことなど多くのメリットがあります。
また内視鏡を使った開放術もあります。

②アミロイドによるばね指

 ばね指の症状・診断
指を曲げるときにカクッと引っかかる、まがったまま指が伸びなくなるなど、指の曲げ伸ばしが困難になります。

 原 因
手の指を曲げる屈筋腱は腱鞘という腱のトンネルを通っています。透析患者さんでは、アミロイドが沈着しこの腱鞘が肥厚して、屈筋腱の動きがひっかかるようになり、指の曲げ伸ばしができにくくなります。
透析歴が長くなると多く見られるようになり、数本の指に症状がみられる場合もあります。

 治療・手術
手術は、腱鞘の上を切開して、腱がひっかかっている腱鞘を切開します。
腱鞘を切開することで指の引っ掛かりはなくなります。

③アミロイドによる肘部管症候群

 肘部管症候群の症状・診断
症状は小指のしびれ、痛みです。また、進行すると小指と環指が伸ばしにくくなり、手の筋肉がやせてきます。
通常の肘部管症候群と違い、肘関節の変形や外傷の既往などに関係せず発症します。
診断には神経伝導速度検査を行います。

 原 因
肘関節の内側には肘部管といわれるトンネルがあり、尺骨神経が通っています。
透析をしていると、この靭帯にアミロイドが沈着し尺骨神経を圧迫することが原因で痛みを引き起こします。

 治療・手術
透析患者さんの場合には、靱帯にアミロイドが沈着して、厚くなり尺骨神経を圧迫しますので、手術は靭帯を切開して神経の圧迫を取ります。

④アミロイドによる肩関節痛

 肩の症状・診断
横になると肩の痛みがひどくなり、起き上がると肩の痛みがよくなるという方がいます。
また、明け方に肩が痛くて目が覚める、透析の終わりごろになると肩の痛みが強くなるといった声も聞かれます。

 原 因
烏口突起と肩峰に付着している烏口肩峰靭帯にアミロイドが沈着することにより発症します。肥厚した烏口肩峰靭帯が、上腕骨頭を圧迫して肩痛が起こっています。

 治療・手術
ステロイド注射を肩関節内にすることで症状がやわらぎます。
疼痛が持続する時には、烏口肩峰靭帯の切除手術を行います。

 

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さまざまな血液透析療法

一般の血液透析は週3回、1回4時間程度が標準的と言われています。
しかし、1日24時間働いている腎臓の働きに近づけるため透析時間をより長くしたり、回数を増やしたりする方法があります。
このほかにも、自宅に透析機器一式を導入して患者自身で透析を行ったり、より多くの老廃物を除去する方法など血液透析にはさまざまな種類があります。
これらは、担当医などとよく相談し、希望する治療法を選ぶことが大切です。

①長時間透析

週に18時間以上の透析します。週3回なら1回6時間以上、隔日なら1回5時間以上といったスケジュールで行う透析です。
透析時間を延ばして十分な透析を行うことで、より多くの老廃物が排出されたり十分な除水が行われたりします。
血圧が正常値となって降圧薬が不要になる患者や、貧血が改善して造血ホルモンの使用量が減ったり、リンやカリウムの吸着薬が減量、不要となる患者もいます。
また、時間をかけて除水することから、急激な血圧低下を防ぐことができ無理のない透析ができます。

②オーバーナイト透析

夜間の睡眠時間を利用して7~8時間透析をします。
長時間透析ができるため透析中の血圧が安定したり、より多くの老廃物が除去できるといった利点があります。

③頻回透析

隔日や連日で透析します。隔日透析では一日おきの透析になります。非透析日の中2日が出ないために体調の維持がしやすいという利点があります。

④在宅血液透析(HHD)

病院と同じ機器を自宅に設置し、医療施設の指示に従って自分で透析を行います。
在宅での透析を行うには、患者および介助者が医療施設において十分な教育訓練を受けなければなりません。
自分の好きな時間に透析をすることができ、回数も自由に決められ、長時間の透析も可能です。

透析施設が行うことを全て自分で行うため、自己管理や自己決定がきちんとできる方に向いています。また、透析中は必ず身近に介助者がいることが義務付けられています。

⑤オンラインHDF

血液透析(HD)と血液濾過(HF)の併用で、血液濾過透析(HDF)という療法です。
HDFでは、濾過する量を増やすために補液をし、血液透析より濾過を多く行うことで、血液透析では除去しにくい低中分子蛋白物質を取り除くことができます。
オンラインHDFの治療効果として、関節痛、かゆみ、不眠、イライラ、むずむず脚症候群、透析アミロイドーシスの軽減などの報告がだされています。

なお、オンラインHDFの長期的効果についての根拠ははっきりとはしていないのですが、長期にわたって透析療法をする可能性のある方においては、長期的効果が期待できるのではと考えられています。また、透析中に血圧が低下しやすい方にもオンラインHDFは向いているといわれています。

◆オンラインHDFのメリット
オンラインHDFは、透析アミロイドーシスの予防及び透析困難症(透析中の低血圧)の治療に効果があると報告されていました。
HDでは透析時間が長いほど透析効率が増大しますが、HDFではその効果は限定的です。しかし、透析時間が長いほうがからだへの負担が少ないことはHDでもHDFでも同じです。

 

◇腹膜透析について普及しないわけ
 ①腹膜透析の専門医が少ない。
 ②日本は非常に高品質で多様な血液透析をしている。
 ③腹膜透析は感染症と自己管理の困難さの欠点がある。
 ④だいたい5年~7年程度で血液透析に移行しなければならない。

以上、アミロイドによる障害とさまざまな血液透析の現状について書かせていただきましたが、誰もが今後アミロイドの障害は年が進むごとに深刻となってきます。透析療法も多様化してきましたが、今後の技術の進歩に期待してやみません。

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